ゲームレビュー
◆◆◆ ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて ◆◆◆
プレイ状況:裏ボス撃破
シナリオ
◆ のっけから追われる立場に ◆
ゲームを開始して程無くお尋ね者扱いされてしまうという、ドラクエシリーズでは類を見ない展開になっている。
人相書きが出回ってるとかではなく、妨害はあれど街や城には普通に入れるので冒険自体は順調に進める事ができる。
むしろ行く先々でトラブルを解決していくので、良い意味で顔を覚えられる事もしばしば。
◆ 中盤で展開が大きく変わる ◆
冒頭は凄惨な光景を見る事になるが、災害の真下の町よりも大分離れたデルカダールの方が甚大な被害を受けているなど、不思議な被害状況になっている。
イシの村が最後の砦として改装されているが、デルカダール界隈だけの問題で別に最後でもなんでもないし。
ただ、地形があちこちで変化しており、今まで通行できなかった場所が通れるようになっていて、そこから散り散りになった仲間達を探す旅に出る事になる。
◆ 先代勇者の顛末の謎 ◆
「先代勇者がユグノアを建国した」「先代勇者の子孫が主人公」という話が序盤に語られるが、ここに不明瞭な部分がある。
後に、先代勇者は首魁討伐の志半ばで、恋仲の賢者も後に死んでいる事が判明しており、ユグノアがいつ建国されたのか、誰が引き継いでいるのかその辺りが分かっていない。

一応「子孫」には「後の世代の人々」という意味が、「先祖」にも「その家系に属した過去の人々」という意味があるので、先代勇者の親戚が国を治めていった可能性はあるが…。
…先代勇者には恋仲の賢者以外に愛人がいた…とかはあまり考えたくない…。
◆ イベントの差異 ◆
選択肢次第でその後の展開が変化する人魚のイベントは、過去に戻ると一方の展開で進んだ事になっており、もう一方の選択肢を選んだ人から見れば奇妙な状況になっている。
◆ 勇者のアザの扱いが軽い ◆
主人公の手の甲にある勇者のアザだが、なんか困った時は大概お世話になる。
雷は落とすし、大樹の記憶は読み解くし、封印やバリアや呪いは解けるし、アザの力を奪われる事も貸し与える事もできる。
多少困った展開になっても、アザがペカーと光ってなんとかしてしまうので、ある程度展開が先読みできてしまうと、ちょっと残念な事も。

ある人物は「勇者とはどういう者か」と説いて下さるが、あまりにアザの出番が多い為、主人公の耳に届いたのかどうなのか…。
また、先代勇者もアザを持っていた事以外、何故アザに不思議な力が備わっているのか最後まで分からず、謎も多い。
キャラクター
仲間の服装が赤か緑かで分かれているような気がする…。
主人公の服が紫なのは、仲間との対比なのかも。
◆ 主人公 ◆
ドラクエ恒例の無口な少年。さらさらヘアーが特徴的なさわやか勇者。
シナリオ上ではあまり感情が出る機会がなく、ピークは序盤で崖から落ちそうになったエマを助けた時くらい。
パレードの服を着せれば笑顔で踊りながら歩き回るし、意外とノリはいいのかもしれない。
高いところから飛び降りはノーダメージなのに、シナリオ上ではやたらと気絶する。気絶ポイント(?)が海や川なので、水に弱いのかもしれない。
凄まじい平衡感覚の持ち主で、特技は多分綱渡り。

呪文も特技も強力なものを覚えていくが、特技の方が種類が豊富で火力が高い。
上位呪文が出来た都合もあるのだろうけど、メラゾーマやベギラゴン、ザオリクが使える主人公は初めてかも。
◆ カミュ ◆
牢屋で出会う主人公の頼れる相棒。
仲間になるきっかけになった出来事はあまり信用していなかったようだけど、勇者自身は信用しているようで、超高所から一緒に飛び降りてくれたり、転倒した主人公を助けたり、主人公を庇って捕らわれの身になったりしている。
…こうやって書くと相棒?って感じだけど、最終的には助ける事になるから相棒なんだろう、多分。

ブーメランで全体攻撃、短剣で状態異常を起こせるので雑魚・ボス戦どちらでも火力を発揮できる。
呪文はあまり覚えないが、ジバリア系やザメハなど地味に役に立つものも多い。
ただ、リレミトを覚える意味はあるんだろうか…主人公の方が低レベルで覚えるし。
終盤は全キャラ中最大火力をたたき出す猛者に化ける。あと、カミュのダンスは必見。

余談だが、彼の妹が旧スクウェアのゲーム「クロノクロス」のキッドに似ているのは、前作の「クロノトリガー」のキャラデザが鳥山明氏だからだろうか?
◆ ベロニカ ◆
ラムダ出身の双子の姉の方。強気で勝気なお嬢さん。
国の王子様相手でもはっきり物は言うし、必要があれば街中でも攻撃呪文をぶちかます。
勇者を導く事に並々ならぬ覚悟を持っており、そこが原動力に繋がっているのかも。

強力な攻撃呪文の使い手。スキルパネルから更に上位の呪文も覚えられる。
両手杖で呪文の火力を上げるも良し、ムチスキルもそれなりに強いので、どちらも活かせる…はず。
問題はHPは低い事。盾が持てないので、防御面は十分カバーしないと毎ターン瀕死になりがち。
その体型の為、見た目変更装備に可愛らしいものも多く、ネコのきぐるみは一回は着せておきたい。

◆ セーニャ ◆
ラムダ出身の双子の妹の方。のんびり天然なお嬢さん。
出会いからおっとりした雰囲気で、 クレイモラン城下町に初めて来た時のボケっぷりは必見…かもしれない。
一方で芯はしっかりしており、中盤では確固たる信念を主人公に打ち明けてくれる。

僧侶系の呪文をメインに覚えていくので、スティック持ちにして回復補助メインがオススメ。
中盤で覚醒してスキルパネルが大きく変化するものの、終盤になると元に戻ってしまうのが残念。
見た目変更装備は伝説の賢者由来のものが多い。あと、髪は長いほうが好きかな。うん。
◆ シルビア ◆
旅芸人のオネエさん。
勇者に対して色んな事情を抱え込んでいるパーティーの中で、一切勇者と繋がりがない賑やか担当。
独特な雰囲気に加え、騎士道に精通してたり、豪奢な船を持っていたりと、若い頃はどんなだったのか全く想像がつかない感じ。
パレード結成して全国行脚しているあたり、カリスマ性は父親譲りなのかも。

おとめスキルのハッスルダンスは終盤まで十分通用する回復量。最優先で覚えたい。
きょくげいスキルのツッコミは、状態異常になりやすい今作ではかなり重宝する。
武器は片手剣・短剣・ムチが使えるが、どれでもそれなりに火力があるのでお好みか。
パレード服等見た目が派手なものか、騎士由来の専用装備が多い。
◆ ロウ ◆
マルティナと一緒に旅をしているおじいちゃん。
国や町の偉い人と親交が深かったり、古代語に詳しかったりと、年齢に相応しい聡明さがある。
一方、ニマ大師とのやりとりやムフフ本云々の話で、ドラクエらしさを垣間見せてくれるところも。
名前のロウは、祖国の建国者に由来してるのかな。
個人的には、エンディングで主人公はロウと一緒に祖国の復興の手伝いをしてほしかった。

おじいちゃんだからパネルで補う必要があるのだろうか。スキルパネルはステータスアップ物が多い。
攻撃呪文はドルマ系、ヒャド系を、シナリオ上で特技のグランドクロスを覚える上、回復・補助系も豊富なので攻守どちらでも立ち回れる。火力は高くはないが、万能。

◆ マルティナ ◆
ロウと一緒に旅をしている女性。
武芸の達人という面が押し出されていて、グロッタではカミュを圧倒し、グレイグにも引けを取らず、ホメロスにも真っ先に飛びかかるとなかなか苛烈。
主人公に対してはかつて守れなかった負い目と、今度こそは守らないとという使命感がある様子。
また、主人公に幼馴染がいると分かると意味ありげな相槌を打ったりと、心境は複雑な模様。
中盤、久々に会ったらすっかり様変わりしててかなり衝撃的だったけど、逆にそれを武器にしてしまうのは大人の女性ならではの強かさか。

今回のおいろけ枠。
おいろけのスキルパネルで手に入る特技は強力なものが多いが、MPが少ないので連発はできない。
装備が強いヤリスキルか、かくとうスキルを習得していくのがベターか。
通常は武闘家っぽい格好だけど、見た目変更装備はバニースーツやらビスチェやらドレスやら水着やらと種類は幅広い。水着はもっとセクシーでも良かったんじゃないかって思うけど。
◆ グレイグ ◆
デルカダールで英雄と呼ばれている将軍。
堅物で真面目で腕も立つと、将軍と呼ばれるに相応しい実績と雰囲気を持ち合わせている。
一方でムフフ本やぱふぱふに反応を示すなど、冒険を進めるとおっさんらしい部分も見せてくれる。
ホメロスの事は友とか俺の光とか言っていた割に、本性が判明して幻影で惑わされると分かると「こんな胸クソ悪いものを見せるヤツはひとりしかいない」とか言っちゃう。それでいいのか。

えいゆうスキルで火力の高い特技とにおうだちを覚え、オノスキルで敵を状態異常にして、たてスキルで防御を固める。呪文は回復・蘇生・防御系を覚える。
参入は最後になるので、えいゆうスキルで火力重視にするか、たてスキルで壁役にするか、パーティーの傾向を見てスキルを割り振ると良いかも。
★ エマ ★
主人公の幼馴染。周りにからかわれるのもあって、主人公の事は意識している模様。
ただ、パーティーの半分は女性なおかげで対抗意識でも芽生えたのか、中盤猛烈な幼馴染アピールがあり、これがなかなかあざとい。
おまけに彼女にだけ主人公と結婚する選択肢があり、それが強力な武器入手の条件でもあるという。どうしてこうなったのか。
なんかもうちょっとエマ絡みのイベントがあれば、こんなあてつけのようなキャラにならなかったんじゃないかなって思わないでもない。
★ ホメロス ★
デルカダールの軍師。
グレイグを目標に努力しても勝てず、魔に手を染めるも最後には倒され、グレイグの心情を知る前に口封じの為に主にトドメを刺されると、敵ながら今回一番報われなかったであろう人。
口封じの為に子供に呪いをかけたり、海に逃げた船を魔物に襲わせたりと軍師らしく策は練っているようだけど、主人公救出の手助けをした町には制裁をせず、氷の魔女には軽く頼み事をしてそれっきりと、しっかりしているのかしていないのかよく分からない面もある。
案外ドジっ子…なのかもしれない。
システム
◆ フィールド・ダンジョン ◆
フィールド上にはモンスターが歩き回っており、接触、または攻撃すると画面が戦闘用画面に切り替わる。
戦闘時の背景には戦闘に加わっていないモンスターが歩き回っていたりして、なかなか芸が細かい。

ダンジョンではキラキラ光っているモンスターがおり、これを倒すとモンスターを操って移動する事ができる。
空を飛ぶ・高い所に飛び移る・壁を這うなどがあり、これがないと進めない場所もあるので上手く活用していく事になる。

また、フィールド・ダンジョンにはキラキラと光っているポイントがあり、ここを調べると素材などのアイテムが手に入る。
時間経過で復活するし、マップに収集可能ポイントも表示されるので、ルーラを覚えてもフィールドを歩き回る機会は多い。
◆ 戦闘:難易度 ◆
序盤・中盤はレベル上げを意識しなくても進めるようになっている。
各ボス戦でも、回復さえ怠らなければぎりぎり死なずに済む程度にはなっていて、回復手段も多いのでそうそう全滅する事はない。
問題は終盤で、毎ターン誰かしら瀕死になるほどの火力の敵ばかりが出てくる為、ある程度のレベル上げと装備の補強が必要になってくる。
また、状態異常を使ってくる敵がかなり多く、これの対策が必須になってくる。
◆ 戦闘:AI ◆
作戦に沿った行動を取ってくれる人工知能の戦闘の事。
作戦自体は色々あるが、行動は比較的単調。
「バッチリがんばれ」と「ガンガンいこうぜ」の差があまりなく、常に全力で敵に攻撃してしまう。
ロウはグランドクロスを覚えるとそればかり使うようになるし、短剣キャラが毒やマヒになっていない敵にタナトスハントを使用したりする。
不満があれば「めいれいさせろ」もあるので、使い分けは必要。
◆ 戦闘:状態異常 ◆
毒・マヒ・魅了・睡眠・呪い・1回休みなどがある。
ターン経過・アイテム・呪文で回復する。装備で防ぐ事もできる。
また、味方が魅了や睡眠になったキャラがいると、攻撃の選択肢にそのキャラの名前が出てきて、攻撃して状態を状態異常を解除する事もできる。
攻撃力は敵に与えるものと同じで、かいしんの一撃とかも普通に出るので、火力の高いキャラにやらせるとうっかり倒してしまう事もあるので注意。

魅了中のキャラがいる時に補助呪文を敵にかけようとすると、魅了中のキャラにもかかってしまうのは何とかならなかったのかな…。
◆ 呪文の扱い ◆
ルーラがダンジョンや家屋の中で問題なく使用できる為、リレミトの存在意義がなくなってしまっている。
また、恒例のルーラ使用で天井に頭をぶつける事がなくちょっと残念。
◆ ふしぎな鍛冶 ◆
レシピブックを手に入れるとリストに追加され、必要な素材を消費して装備を作成するミニゲーム。
素材は複数にパーツが分かれており、集中力を消費して素材を叩き、パーツのゲージ内の成功ゾーンの中央で止められれば、手に入る装備に最大+3までの補正が加わる。
失敗しても装備品は手に入るし、うちなおしの宝珠を使ってリトライも可能。
レシピブックは町・ダンジョン・クエスト等で入手可能で、現行行ける町と同程度かワンランク上の物が多い。必要素材もフィールドで拾えるものが多いので、序盤から終盤までお世話になる。
◆ クエスト ◆
街などで頼まれるお願い事。クリアするとレシピやアイテムをもらえる。
転生モンスターを倒せ、れんけい技で敵を倒せ、などの厄介な条件がついているのもあるが、クリア自体難しいものはあまりない。
シナリオの進行で一部クエストが受けられない事もあるが、終盤には全てのクエストを受けられるようになっている。
一番苦労したのは「成金ベシムの挑戦状」かな。ジャックポットバニーがなかなかアナウンスしてくれないから全部に1点賭けして。被害は少なかったけどだいぶ時間はかかった。
◆ ぱふぱふ ◆
町にいる女性にぱふぱふしてもらえるイベント。中には、ダンジョンで体験できる刺激的なぱふぱふも。
歴代シリーズの展開をそのまま踏襲しており、過去作を遊んでいるとニヤリとするかも。
ぱふぱふ後のパーティーのコメントも面白い。
◆ ミニゲーム ◆
ウマレース・カジノ(スロット・マジスロ・ポーカー・ルーレット)・ボウガンアドベンチャーがある。
報酬は強力なレシピや装備品があるが、こなしておくと冒険が少しは楽かも、というレベル。
ボウガンアドベンチャーの的はかなり小さく、かなり配置場所が分かりにくいので、攻略サイトを漁らないとクリアは難しい。
ウマレースはレースごとにジャンプ台・回復ポイント・罠の位置が固定なので、何度も挑戦してルートを把握すれば1位を取る事は出来る。指が磨り減るかもしれないけど。
グラフィック&ムービー
◆ グラフィック ◆
近景・遠景ともに背景は美麗で、遠い先まで見渡せて圧巻。神の岩の絶景はかなりのもの。
一部の込み入ったマップでは読み込みに時間がかかる所もあるが、基本的にスムーズにフィールドは歩き回れる。
主人公らやNPCとで違和感はなく、どちらも背景に普通に溶け込んでいる。
◆ ムービー ◆
オープニングやシナリオの要所で組み込まれるムービーが綺麗なのは言うまでもなく。
ただ、キャラクターの造作が鳥山明氏のキャラ絵と雰囲気が異なるので多少違和感は拭えないかも。
音楽
◆ 新曲も過去作の曲も ◆
シリーズを代表するレベルアップの効果音やセーブ時の曲を差し置いても過去作の曲が多い。
ホムラの里(3「ジパング」)、海(4「海図を広げて」)、メダル女学院(5「王宮のトランペット」)等々。
過去作の曲を聴いてシリーズを懐かしむ人には良いかもしれないが、過去のナンバリングは新曲が多かった為、新曲のみを求めていると肩透かしを食らうかもしれない。
またイシの村(襲撃後)に聴ける「黄昏の荒野」は、ドラクエ2「遥かなる旅路」の冒頭のフレーズが入っているっぽい。

新曲で好きなのは、シルビアのメインテーマ「オーレ! シルビア!」かな。聴いているだけで踊りだしたくなるテンポが耳に心地よい感じ。
ボス戦でよく聴く事になる「果てしなき死闘」も飽きない魅力がある。
「空飛ぶ鯨」は時期が過ぎると聴けなくなってしまうのが残念。
エンディングで流れる「過ぎ去りし時を求めて Echoes of an Elusive Age」は、ムービーも相まって何度聴いても良いものだと思う。
総評
◆ 公式の発言 ◆
主人公だけが過去の世界へ戻る終盤の展開は、公式の回答では「歴史は修復するっていうか一個にまとまってく」との事。
過去の世界にいるキャラが時折「前にもこんな事があったような…」と言うのは、歴史がまとまっていく際の名残なのかもしれない。
また、エンディングで同じ装丁で色違いの2冊の本が映っており、「実はドラクエ11エンディングの本は2冊あるんです」という公式の発言もあるので、11の世界観で何か別のストーリーがあるのかもしれない。
◆ シナリオは今後の展開次第なのかも ◆
システムに問題は無く、グラフィックも申し分なく、戦闘バランスも取れている。
曲も過去作は目立つが新曲も含め良曲ばかり。
シリーズ伝統のサブイベントも多いので、シリーズを通して遊んでいると、楽しさは膨らむばかりだろう。
勇者のアザありきの展開や、終盤のシナリオ・イベントに引っかかる物はあるが、続編を匂わせる終わり方もしているので、今後の展開次第…なのかもしれない。