ゲームレビュー
◆◆◆ スターオーシャン5 Integrity and Faithlessness  ◆◆◆
プレイ状況:シナリオクリア&蒼帝の回帰攻略中
シナリオ
◆ スターオーシャンの宇宙史の補完話 ◆
スターオーシャン3の公式設定資料集に載っている「宇宙暦537年クルップ博士により「重力ワープ」が開発される。」年の話。
…なんだけど、その辺りの説明が主人公のフィデルに殆ど明かされない為、ちょっとばかり説明不足感が否めない。
連邦の話はフィデル達には関係ないんだけど、クルップ博士の紹介とか、呪印聖殿の最奥の話とか、ちょっとでも説明が欲しかった。
◆ 世界が割と狭い ◆
調べ物の為に行ったのに調べもせずにとんぼ返りしたり、「二度と戻れないかもしれない」と言われ希望と不安を胸に星の海に出かけたと思ったら用だけ済ませてさくっと戻ってきたり、せっかく行ったのに引き返す事が多い。
惑星も、フェイクリード以外は小惑星群に行ったくらいで惑星探索はできていなかったりする。
シナリオ上、王都や村から他国の町まで2日弱で往復できる事になっているので、大陸自体とても狭いことが分かる。
また、国同士で戦争をしていたり要人が倒れてるのに、王族が一切出てこないのが世界観を一層狭くしてる要因と言えるかもしれない。
そもそも、敵国の国境らしき町はあるけど、敵国の首都へ続く道は影も形もない。民間人はどうやって行き来してるのやら。
◆ そこかしこで話の粗が目立つ ◆
主人公達の行動に不自然な点がちらほら見受けられる。

1.国に山賊退治を依頼するために、安全な海岸を経由して王都へ行ったのに、帰りはわざわざ山賊が出る危険な山間を抜け、結果山賊に襲われる。
 シナリオ冒頭で、山賊が山間と村を繋ぐ道を歩き回っている姿を確認しているし、村への襲撃も山間の方から来ている為、山間を通れば山賊と遭遇する危険は理解しているはず。
 ヴィクトルに勧められたからとはいえ何故そのルートに固執したのか不明。

2.リリア保護の過程が唐突。
 宇宙船墜落→リリア宇宙船から出てくる→遅れて宇宙船から人が出てきて武器を構える→フィデル、彼らに殴りかかる→リリアの力で彼らの動きが止まる→フィデル、リリアを連れて逃走…という具合。
 宇宙船から出てきた人達がリリアを保護しようとしていたようにも見える為、フィデル達が誘拐犯みたいなポジションになってしまっている。

3.墜落した宇宙船に対して、皆無反応。
 国内の珍事なのに国に仕えているヴィクトルも何も言わないし、未知のものに興味を膨らますフィオーレもコメントなし。
 リリアの記憶探しの調査対象にすらならない。
 宇宙船に因縁のあるアンヌやエマーソンすら無反応。結局最後の最後まで宇宙船は置きっ放し。

4.戦争の真っ只中リリアの記憶の手がかり求めて、女子供を連れ最前線に突っ込むフィデル達。
 戦争に呼んでもいない民間人が出しゃばってる時点で既におかしいというか。
 ダリルが怒るのも無理はない。しかも気づいたら英雄扱い。
◆ 1のオマージュ要素が強い ◆
スターオーシャン1のシナリオに似通っていて、「連邦に対立している勢力が未開惑星で良からぬ事を企んでいて、連邦の人間が現地人の協力を得て解決する」流れになっている。
墜落した宇宙船に対してイベントが発生しないのもそれが理由と思われる。(スターオーシャン1でも会話はあるが探索対象にはならない)
装備に関して言えば、艦長のエマーソンが弓、副官のアンヌがナックルと、1のロニキスとイリアのまんまだけど、3のマリアとクリフ・ミラージュにも言えるから、これはある意味狙ってやっていると思われる。
キャラクター
登場キャラが少ない分、それぞれに役割が与えられていたおかげか、浮いてる印象はあまりない。
ただ、年齢に対して皆言動が若いというか…−5歳低くても良かったんじゃないかな、と。
◆ フィデル ◆
聖人君子とは言わないけど、精神的に落ち着いていて、ある意味プレイヤーにより近い目線で物を判断している主人公。ついでに地獄耳。
ヴィクトルの兄弟子を自称しつつも年上の彼に敬意を払ってるし、ミキ達とエマーソン達の間を取り持ったり。あんまりに出来が良すぎて非の打ち所がないんだよな。
ふとしたタイミングでぽろっと黒いセリフを言う事もあるけど、これは時と人を選んで言ってるんだろうな。
欲を言えば、フィデルパパともうちょっと親子の会話が欲しかったかも。

◆ ミキ ◆
フィデルの幼馴染兼、回復役兼、皆のおかーさんポジション。
PAを見てると、人一倍以上に背負い込もうとしている姿を見る事ができる。
術士になったのも適性年齢よりはるかに若い年齢だったらしいから、思い詰めやすい性分なのかも。
また、いわゆる「ぶりっ子女子」を女の敵認定しているフシがあるんだけど、誰の事を言ってるのやら。なんか個人的な恨みがあるのか?
◆ ヴィクトル ◆
シナリオだけ見てると、フィデル達の窮地を颯爽と現れて加勢してくれたり、敵の裏をかいてリリアを救出したり、主人公ばりにいい事言ったりしてるんだけど、PAで色々残念なところが露見してしまう、考えようによっては美味しいトコ取りをしている人。
そういう意味ではネタ担当。ミキ曰く「ツンデレ」らしいけど、あれはわんこ気質だよなあ。
お互いに苦手意識を感じているリリアと、なんとか歩み寄ろうとするPAはなかなかほっこりする。
後半のPAで聞ける「私の愛した人は…」のくだりは、誰の事を言ってるんだろうねえ。聞いてみたいような、みたくないような。
◆ フィオーレ ◆
呪印術士のスペシャリストとして、地上以上に宇宙で大活躍しちゃう人。
今回のお色気担当。…かと思いきや、派手なのは見た目だけで、中身は割としっかりしているっぽい。
彼女の言う「あの人」がどんな人なのか気になるけど、話を聞く限り「途方もなくニブい男に片想いしている状態」なのかな。
あとPAでは、ヴィクトルやエマーソンにある疑惑の目を向けていたり、幅広い恋愛ジャンルをご存知な様子。
個人的にはテッドとのPAが印象的だったかな。「End of Eternity」の中の人繋がりってだけで、ゲーム中は繋がりのない2人のPAがあるとは思わなかったし。ファンサービス、かな?
◆ エマーソン ◆
今回のイロモノおやじ担当。フィデルにフィオーレのスタイルの事を話したり、ミキの呪印の位置を知りたがったり、ハナ(ヴィクトルの部下)に言い寄ったりと、なかなか枚挙に暇がない。
終盤になってくると、フィデルの為に故郷の歌詞を贈ったり、自分の境遇について語りだしたりとかなり饒舌になってくる。フィオーレ曰く「深酒すると真面目になる」らしいから、もしかしたら酔っ払ってるだけなのかもしれないけど。
顔のあちこちにキズを作ってるけど、彼遠距離攻撃なんだよな…一体何やったらあんなキズがつくんだろう。
Lv100越えになるとレベルアップ時にSO2由縁の単語を口にするので、どうやら彼の直系とらしい。
◆ アンヌ ◆
困った上司に苦労する真面目な部下…なポジション、なのかな。あと、機械担当。
ネコ好きだったり、犬はライバルだったり、オカルトが苦手だったり、家事が苦手だったり、ストーカー慣れしてたり、武勇伝凄まじいおばあちゃんがいたりと、PAがなかなか豊富な人なので、ヴィクトルと対になっているのかも。
エマーソンの事は尊敬しているらしいけど、恋愛的にはどうなんだろう…エマーソン絡みのPAは素っ気無かったり叱ってたりと、ベタベタした部分が全く見えないんだよな。デレはいつ見れるのやら。
◆ リリア ◆
設定年齢は12歳らしいんだけど、初期の言動を見ると5歳児くらいに見えるという不思議な少女。それでも後半は10歳児くらいにはなってる…と思いたい。小学校高学年に見えないもんなあ。
PAは誰とも絡まずに独り言を言っている事が多いので、彼女のPAを消化する為に町を何度も出入りしないとならないという状態に陥ったりする。
フィデルやミキに懐いたり、フィオーレに心配されたり、ヴィクトルに気にかけてもらえたりと、なかなかの愛されキャラ。まあなんだ、可愛いは正義だよね。
★ ウェルチ ★
過去作に比べて今回は随分落ち着いちゃったな…まあそれでも、主人公勢に引けを取らないアクの強さはさすがか。
クリエイション関係のクエストは終盤まで続くので話す機会はあるものの、会話自体は多くないのが残念。もうちょっと雑談とかしてみたかったなあ。
システム
◆ 町中のシームレス ◆
町中で横切る人の会話を聞く事もできるが…大体フィデル達は走っているので、ふきだしが出る頃には素通りして画面外に消える事が殆ど。話しかけるとたいがいが別の話を言い出すので、横切る際のセリフを聞きたい場合は動体視力を鍛える必要が出てくるかもしれない。

町人と接触してもすり抜ける為ぶつかる事はないが、接触判定はある為、狭い路地では頻繁に町人がよろめき、都度フィデルが「ごめん」って言う羽目になる。これ必要あったのかな?

フィデルが立ち止まると、他のキャラクターはそれぞれが重ならないよう立ち位置を探して移動する。
特に狭い場所で発生するPAでは、キャラクターたちが喋りながら挙動不審気味に動き回る光景を延々見る羽目になったりもする。

◆ イベント中のシームレス ◆
イベント中は行動が制限されるものの、ある程度は動き回る事が可能になっている。
ただ、この機能の為かイベントの殆どのカメラワークがフィデル基準になっていて、喋っているキャラがアップになったりする機会はあまりない。その為、イベントにメリハリを感じにくくなってしまっている。
うっかりコントローラを動かしたばっかりに、肝心なシーンが画面外で発生、みたいな事もまま起こりうる。
◆ 戦闘中のシームレス ◆
フィデルがフィールド上で敵に近づくと画面が切り替わる事無く戦闘に移行する。
こちらから攻撃を開始すると攻撃値や防御値が上がった状態で戦闘に入れるが、敵に攻撃されると防御値が下がった状態で戦闘に突入する。
フィールドそのものが戦闘画面だが、戦闘可能範囲が決まっている為、操作キャラがその範囲から外れた状態で一定時間経過するとエスケープする事ができる。
戦闘中、操作キャラを任意に切り替え可能になっている。戦闘が始まると、前回戦闘終了時に操作していたキャラから操作できるようになる。
この仕様の為か、フィデルと戦闘操作キャラの距離が離れてしまっていると、戦闘に突入したと同時に操作キャラが戦闘可能範囲から外れてしまい、即エスケープ、という事もまま起こりうる。
◆ 戦闘中のモーション ◆
キャラクターの攻撃モーションは3や4のモーションを利用しているらしく、技名もそちらと同じ。
戦闘中に貯めたゲージを消費して、任意で発動できる「リザーブラッシュ」も一部は3に出てくる技と同じ。
また、技のエフェクトに派手な物が多く、操作キャラが接触している敵に術が発動→画面いっぱい真っ赤に染まって何も見えない(この間、敵から攻撃を受ける)→気づいたら操作キャラが倒れてる、なんてことも。
◆ ロール ◆
各キャラクターごとに付与できる効果の事。キャラクターの行動指針や、ファクターなどがついたりする。
特にファクターは、特定の敵に対して攻撃力が上がったり、確率で敵の防御値を下げるもの、敵の攻撃を受け付けない代わりに継続で一定ダメージを受ける、なんてものもある。
ロールのレベルを上げると新しいロールを習得する事もあるので、組み合わせ次第でかなり戦いが有利になる。色々試してみるのは結構面白い。

◆ プライベートアクション(PA) ◆
フィールド上のあるポイントを通過すると自動で発生するPAと、町の宿屋等の側に表示される円に入って任意で起こすPAがある。
双方ともかなりの数があり、メインシナリオでは見られないキャラクターの個性を知る事が出来る…んだけど、再発生させるには町か施設を出入りするしかないので、ロードが長い今作はなかなか不便。
加えて、今回のPAは一部のロール入手にも関係してくるので、ロードが長いからとスルーするのはちょっともったいない。
◆ パーティスキル ◆
アイテムクリエイションを行う為のスキルの他、フィールド上の特定ポイントで鉱石を手に入れたり、宝箱のありかがマップ上に表示されるスキル。
中にはシリーズ恒例のオラクルや、バーニィにおつかいを頼むファミリア、敵を呼び寄せるオカリナなども。エモーションのように、お遊び要素のスキルもある。
◆ アイテムクリエイション ◆
メニューさえ開ければいつでもアイテムを作れるようになっている為便利。
ダンジョン攻略中にアイテムが枯渇する事自体はあまりないが、拾った素材は即戦力になるアイテムに化ける事も多いので、活用できるのはありがたい。
もっとも、レシピに載っている素材の多くは終盤、特にクリア後にならないと手に入らないものが多いので、もっぱら裏ダンジョンで活躍する事になる。
◆ クエスト ◆
各町にある掲示板やウェルチに依頼され、依頼を達成すると報酬がもらえるシステム。
達成したら依頼された町の掲示板に報告しないと報酬がもらえないので、町とダンジョンを延々マラソンする羽目になるけど、報酬はパーティスキルや呪印書、強力な装備品だったりするので決して無視できない。
また、クエストをクリアする事で次のクエストに派生するものもかなりあるので、結局全部こなす事になる。
世界の端から世界の端の魔物討伐に向かったり、村から国境越えた町の掲示板に依頼が行くのは何とかならないのかな。嫌がらせとしか思えん。
グラフィック&ムービー
◆ ロードが長い ◆
町や施設への出入り、イベントの移行などで10秒弱ほどロードが起こる。
PAは町や施設を出入りしないと再発生しないので、全部見るとなると結構な時間がかかりがち。
◆ カメラのアングル ◆
人によりけりではあるが、3D慣れしていないと画面の回転で酔うかもしれない。
コンフィグでカメラの回転スピードの調整が可能だが、最低値にしてもそれなりに早い。多分最高値で操作する人はいない…と思う。
凹凸の激しいフィールドが結構多いので、がたがたの道を歩くと画面もがたがた動くのがちょっと辛いかも。右上にマップが表示されているので、目が疲れたらマップを見て歩くのが無難。
◆ ムービーもろもろ ◆
シナリオ開始直後に初めて見るムービーが、ミキがフィデルを茶化すというもので、コレが何でムービーに選ばれたのか微妙に分からない。
あと後半、宇宙船同士の戦闘もあるが、ブリッジ内で艦長が指示する光景を見るシーンが殆ど。
宇宙空間で繰り広げられているであろう壮絶な船同士の戦闘はお目にかかれない。

◆ 感情度によってイベントで会話するキャラが変化する ◆
シリーズ恒例の、フィデルへの感情度の高いキャラ専用のイベントもある。
エンディングと決戦前夜はもちろん、ボス戦中のイベントなども喋るキャラが変化するなど芸が細かい。
バグ?
◆ 会話が聞けない ◆
イベントやPAなどのセリフが、一瞬で聞えただけで終わってしまう。下の字幕も消えてしまう。
キャラクター達の動作は通常通り続くので、内容の分からないパントマイムを見る事になってしまう。
原因はよく分からないけど、とりあえずロードすれば解消する。
音楽
◆ 過去作の曲が多い ◆
フィールドやボス戦で、過去作3と4の曲が原曲のまま流れている箇所が多い。
東エイヒッド山脈(3:The Desolte Smell Of Earth)、レスリア城(3:The Outbreak Of War)、呪印聖殿(3:Imperial Garden)、デル・スール戦(3:The Divine Spirit of Language)、這い寄るモノ“トーラス”戦(3:Influence of Truth Appareance)、トレクール処刑塔(4:Shotgun Formation)、宿泊時(4:Momentary Reprieve)、遺却のカテドラル(4:Seeker)などなど。
シーンごとにかなりの曲数を使い分けているので、探せばまだまだありそう。
過去のシリーズでも、それ以前のトライエース系の曲が流れるケースはあったが、サブイベントのみであり曲もアレンジはなされていたので、今回のようにメインシナリオにも原曲を流用したのはただただ残念でしかない。
ただ曲自体は名曲を揃えているので、5から始める人や曲にこだわらない人なら問題はないかも。
総評
◆ 同人ゲーム? ◆
音楽や戦闘中のモーションの流用を見てしまうと、「スターオーシャンの今までのシナリオと素材とスキルを活用して、ファンが新しいスターオーシャンを作りましたよー」…と言われても仕方がない雰囲気はある。
シナリオもちらほらと粗が目立つ…が、単純にフィデルの言動が不可解なだけなので、思い切ってエマーソンを主人公にして、フィデル達を完全に仲間ポジションにしても面白かったのかもしれない。