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廃画廊
小説
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物語の始まり
その日も、前日となんら変わらない退屈な毎日になるはずだった。
朝起きて、朝食に母の作ったフレンチトーストを頬張って、友達と広場で勇者ごっこをして、昼は父の盛り付けたお弁当を食べて。
夜になったら、久しぶりに岩場を抜けて城へ忍び込み、肝試しをしようか。そんな話も出ていた所だった。
途中、母に呼ばれて遠くの町へ買い物に行かされた。馴染みの店に頼まれたものが無くて、他のお店を回った為、思ったよりも帰りが遅くなってしまった。
父から借りた橋渡しの腕輪を使って、村の入口へ転移して───すぐに、村の異変に気付いた。
鼻につく焦げた匂い、鈍器のようなもので壊され黒く煤けた家屋からは、まだ炎がそこかしこで燃えている。夕焼けに照らされたその姿は、まるで天からの降った火の罰を村全体が受けたかのように見えた。
村へと一歩足を踏み入れれば、たくさんの人と、たくさんの魔物が死んでいた。
ある人は背中から刃物のようなもので切られ、ある魔物は全身を無数の矢で射抜かれて倒れ伏している。彼らからこぼれた液体は一様に紅く、とても相反する生き物のようには思えなかった。
あばら家のように荒れ果てた家の中に声をかけても、応えるものは誰もいない。中に入れば、翼の生えた浅黒い鱗の魔物が、剣に貫かれて絶命していた。
友達の姿を探して家へと走れば、入口には剣を持ったガイコツのような魔物が氷漬けにされてバラバラにされていた。
家へと入れば、大きな木箱を背にした友達の母親が、鋭利な刃物に刺されて座り込んでいた。息をしているようには見えなかった。
後ろの箱を見やる。同じ刃物だろうか、何度も箱を刺し貫いた跡がある。箱の下からあふれ出ている血だまりが、誰のものなのか、考えたくはなかった。
───そして、村の中央。広場の噴水の前。
仰向けで倒れた父に覆いかぶさるように母が、そしてその背中を身の丈ほどの長さの槍が突き刺さり、まるで墓標のように夕日に照らされていた。
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